関西のご飯はうまい。安い。量も多い。3年前に住み始めて以来いつも満腹、大満足だ。ただ、街の小さな定食屋で食べるとき、気になることがあった。みそ汁の位置が時々、慣れ親しんだ手前右ではなく、左奥にあるのだ。幼い頃、東北の実家で母から「ご飯は左、みそ汁は右!」とたたき込まれたというのに。
あまりマナーに厳しくない家で育ったのかな。ぼんやり失礼なことを考え、置き位置を変えていたが、私の視野が狭いだけだった。情報サイト「Jタウンネット」が2018年1~2月に「しっくりくるみそ汁の位置」について都道府県ごとに尋ねたところ、東日本では「手前右」の人が多数を占めたものの、西日本は「左奥」と答えた人が半数を超える県が多かった。特に大阪、京都、兵庫の関西3府県では7割を超えた。
「左手で持つので……」
大阪のJR天王寺駅そば、阪和商店街にある「信濃」も、すべての定食メニューでみそ汁が左奥にある。
店長の嶋田雅博さん(55)は「実家も周りの店も同じ。左手で持つので左奥が食べやすいと思いますけど……」。店員の大学生、福島佳(けい)さん(20)も「右にあったら、左奥に置き直します」と断言する。
農林水産省が作った和食のガイドブックには、一汁三菜の基本として「手前左にご飯を、手前右には汁」とある。東京農業大学応用生物科学部の前橋健二教授によると、「左が上位、右が下位」という古来の考えから、大切なものとされる米を左に置き始めたと考えられるという。一方、汁ものにはそうした慣習は見当たらず、「鎌倉時代に一汁一菜が定着したときから、見た目のバランスがよい手前右が続いたことで今の配膳につながったのでは」とみる。
■「大阪商人」の作戦?…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル